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ポケットモンスター カオス&パニック





第8話『帝国』





ポチエナ 「キャウンッ!?」

ズシャァァ!

ソウヤ 「…で、まだやるわけ?」

No.2 「対象…未発見のタイプのラスフォルト…」

No.6 「我々は全滅か…」

No.12 「ランク補正において修正の必要あり…」

ソウヤ 「訳のわかんねぇ奴らだな…第一漆黒の闇なんていかにもな名前名乗りやがって」

突然、戦場に現れた逆十字を掲げる、いかにもな連中。
漆黒の闇なんていういかにも悪って感じのネーミングがちっとアレだが、戦闘力は名前負けしている。
いや、俺が強いのか?
まぁ、仮にもシャミに勝っているしな、うん、俺が強いんだな。

ソウヤ 「さぁって、悪いが重要参考人だ、どこから来て、どうやってトレーナーになったしっかり吐いてもらうぜ?」

No.4 「それはできない、逃げさせてもらう」

マッスグマA 「グマッ!」
マッスグマB 「グマグマッ!」

ソウヤ 「ああっ!? マッスグマ!?」

突然、マッスグマが大量に現れる。
呆気にとられている隙に漆黒の闇にあっさり逃げられてしまう…ておい!?

ソウヤ 「ちっくしょう…逃げられたか、今は戦線の維持が最優先か」

リザードン 『しっかし、アリャなんだ? ディルフォルト…とか、言ってたよな?』

ソウヤ 「ラスフォルトと名前が似ているな…何か意味があるのかもしれないな」

リザードン 『ま、あの程度なら他の連中も大丈夫だろ』

ソウヤ 「だな…」

たしかに、この程度の連中だったらウチの面子なら全員問題ないだろう。
だけどだ、奴ら…負けることが分かっていて挑んできた節があった。
こちらの実力を直に知りたかったてのもあるだろうが…なんか、嫌な感じだった。
まるで…俺たちを糧にして成長しているような…複雑な気分だ。



…………。



フライ 「はい、終了♪ ひとり5秒、ほとんど演舞ね♪」

No.1 「つ…強い…」

No.10 「隊長クラス…いや、それ以上か」

No.7 「レベル8〜9と認定…レベル1の我々では道理で勝てんか」

フライ (気になる単語がいくつか、出てきたわね…)
フライ 「捕まえようとしても、逃げるんでしょうね…今回は逃がしてあげるわ」

No,8 「…遠慮なくそうさせてもらう」

ムクホーク 「ムクホー!!」

上空から、4羽のムクホークが飛んでくる。
なるほど、緊急退避の方法もあるわけね。
打ち落とすのは簡単だけど。

フライ (慎重になられても困るからね、互い互い懐を甘くしてカードを引き出させる…2手3手先を読んで戦わないとね♪)

今回不明瞭な点を明確へと導くキーワード。
ディルフォルト…漆黒の闇…ナンバーズ、レベル。
漆黒の闇は最低でも10人以上のメンバーを要する、そして一隊員のレベルは1。
使用ポケモンも進化前でほとんど野生同然の育成の行われていないポケモンばかり。
だけど、私を隊長クラスと称していた…ということは、漆黒の闇の隊長は向こうの言うレベル8以上?
あとはディルフォルト…私たちをラスフォルトといい、彼らはディルフォルトと名乗った。
その意味合いは不明だけど、恐らく対になる言葉かなにかでしょうね…。

フライ 「他の皆大丈夫かしらね…隊員だけなら、問題ないはずだけど」

向こうで言うところ、こちらの平均レベルは7以上はあるはず。
だったら問題ないでしょう、彼らレベル1だそうだし。



…………。



メフィー 「はぁ…はぁ…!」

ライボルト 「ラ…ライィ…!」

No.13 「……」

ボーマンダ 「ボーッ!!」

私は苦戦していました。
黒衣に逆十字、私より身長が低く、スラッとした体格。
頭部を完全に覆った仮面を被っているけど女性だと分かりました。
名前も教えてくれず、ただ命令しか下さない…。

No.13 「『ドラゴンクロー』」

ボーマンダ 「ボーッ!!」

メフィー 「ライボルト、『かみなり』!」

ライボルト 「ラ…ライイィッ!!」

バッチィィィン!!

ボーマンダ 「!?」

ボーマンダに『かみなり』が直撃してボーマンダは怯む。

メフィー 「よ、よし! ライボルト、次は『10まんボルト』!」

No.13 「……」

ライボルト 「ラーイーッ!!」

バチィィン!!

ボーマンダ 「ボ…ボーッ!!」

ボーマンダは体勢を立て直すや否や、『10まんボルト』なんてどこ吹く風といわんばかりにライボルトに急降下してくる。
『10まんボルト』は紙一重で回避され、そのままボーマンダの前足から繰り出させる技にライボルトは…。

ザッシュウウッ!!

ライボルト 「ライーッ!?」

メフィー (回避する気なんてなかった!? 結果的に最良だったけど一歩間違えれば自分が危なかったのに!?)

No.13 「『だいもんじ』」

メフィー 「! 出てきて、ハピナス! ライボルトを庇って『タマゴうみ』!」

ハピナス 「ハッピー♪」

ボーマンダ 「ボーッ!!」

ゴオオオオオオッ!!

ボーマンダの口から灼熱の『かえんほうしゃ』が放たれる。
一瞬反応早く、私はハピナスをライボルトの前面に押し出し、辛うじてライボルトのダウンを逃れる。
そして、ハピナスの体力を削る代わりにライボルトの体力を『タマゴうみ』で回復した。
ハピナスは体力と特殊防御力に優れたポケモン、これくらいならなんてことない!
それに、あのボーマンダ、物理攻撃は得意だけど、特殊攻撃は多分苦手だ!

No.13 「『じしん』」

ボーマンダ 「ボーマンッ!!」

メフィー 「戻ってライボルト、ハピナスはもう一度『タマゴうみ』!」

ハピナス 「ハッピッピ〜♪」

ズドォォン!!

メフィー 「きゃあっ!? く、出てきてフライゴン!」

私はボーマンダの『じしん』で押しつぶされそうな衝撃を受けたけど、なんとかフライゴンを出す。
ハピナスは『タマゴうみ』で自分の体力を回復、とりあえずまだ大丈夫。

No.13 「……」

ボフゥン!

カメックス 「カメーッ!!」

メフィー 「!? カメックス…そう、ダブルバトルをするというんですね…わかりました」

この人は強い。
シングルバトルじゃ、私はこの人に勝てないかもしれない。
でも、ダブルバトルは違う…ダブルバトルなら負けない!

No.13 「『じしん』」

ボーマンダ 「ボーマッ!?」
カメックス 「ガメッ!?」

メフィー (!? ポケモンが戸惑った! どっちも使えるんだ!)
メフィー 「ハピナス、『れいとうビーム』、フライゴンは『すなあらし』!」

ハピナス 「ハッピー!」

ボーマンダ 「!? ボーッ!?」

これは明らかに相手のミスでした。
どっちのポケモンも使えるのにどっちが使えばいいか言わなかったらポケモンは戸惑うに決まっている。
第一、こちらのフライゴンには『じしん』なんて通用しない。
あまりオススメとは思えないけど…。

ボーマンダ 「ボー…」

ズシャァッ!!

ボーマンダは『れいとうビーム』に倒れて、地面に激突する。
相手は何も言わずボーマンダをボールに戻した。
頑張ったポケモンに労わりの言葉も掛けないなんて…。

そして、フライゴンが『すなあらし』を起こして、フィールドを荒らす。
状況はこちらに流れた。
この調子なら勝てる!

No.13 「な…ぜ…」

メフィー 「? 喋った…?」

仮面奥から曇った声が聞こえた。

No.13 「な…ぜ…た…お…れ…な…い」

メフィー 「あ…あなたこそどうして戦うの!?」

No.13 「な…ぜ…ど…う…し…て…?」

? 「そこまでです」

メフィー 「!? あ…あなたは!?」

突然、真っ黒な鎧に身を包んだ、長身のお兄さんが現れました。
見た目的にこの人に似てますけど!?

? 「私はアルテミシア、この者はNo.13」

メフィー 「ナンバーズ? 人を…番号で区別するんですか!?」

私はこの人の態度に少し嫌悪の念を抱く。
人を番号づける…それが凄く嫌だった。

アルテミシア 「名前がないので致し方なく、No.13…もう十分だ、帰るぞ」

No.13 「……」

No.13という少女はカメックスをボールに戻すとあっさり背中を見せた。

メフィー 「ま、待ってください! あなた方は何者なんですか!?」

アルテミシア 「我々は漆黒の闇、今はそれだけですよ」

メフィー 「…漆黒の…闇…」

その言葉を残し、二人は戦場を去りました。
すでに、敵攻撃は止み、なんとか戦線の維持は成功したみたいです。

メフィー (漆黒の闇…あれほどのトレーナーがいるなんて…)





…その後、私たちの作戦は成功し、カネイルド要塞は陥落しました。
漆黒の闇もあれ以来襲っては来ませんでした。
そして無事、カネイルド要塞の攻略に成功したときのことでした。




レイクリッド 「『ディルフォルト』?」

フライ 「はい、漆黒の闇に所属するトレーナーたちのことのようですが…」

レイクリッド 「『純なる使役者』…か」

ソウヤ 「純なる…?」

レイクリッド 「ラスフォルトは異なる使役者という意味であり、ディルフォルトは純なる使役者といいます」

フライ 「フォルトは使役者、ラスは異なる、ディルは純なるという意味かしら」

純ある使役者…で、私たちが異なる使役者…ですか。
つまり、彼らはこの世界で生まれたトレーナーということですか。(注:シュンさんから聞いたことですが)

レイクリッド 「しかし、所属不明の漆黒の闇最低13人の使役者で構成され、黒衣と逆十字を掲げる部隊ですか」

メフィー 「No.13の女性は特別強かったです…加えて現れたアルテミシアっていう人は言いようのない威圧感がありました…」

ソウヤ 「話を統計すると、そのNo.13だけ逆十字が赤色だったみたいだな」

シュン 「他の12人は黄色いのにな…隊長格ってこと?」

レイクリッド 「かもしれませんね…ですがフレシア王国にそれだけの部隊を養成する機関があるとは到底思えません…」
レイクリッド 「可能性があるとすれば…」

メフィー 「…すれば?」

レイクリッド 「恐らく、エリュクス帝国」

シュン 「! エリュクス帝国っていえばたしか…」

フライ 「コード地方を統一する国家ね」

レイクリッド 「そう、このフレシア王国の国境を挟んで南に存在する国家エリュクス帝国」
レイクリッド 「フレシア王国が裏でエリュクス帝国と繋がりがあるのなら、ありえることです」

シュン 「でも、あなたの話ではこの世界ではポケモンと人の共存は不可能なのでは?」

レイクリッド 「はい…我々は所詮食うもの、食われるものの立場…おおよそありえないと思います」
レイクリッド 「…ですが、現実に今目の前にあなたたちという存在がある以上、絶対とはいえないかと…」

ソウヤ 「…なんにせよ、漆黒の闇はポケモントレーナーの集団だってことだろ」

フライ 「怖いのは、今はポケモントレーナーとしてのノウハウ0の素人集団だということ」
フライ 「もし、何かしらラスフォルトの協力を得て、ノウハウを得られたら…少し厄介な存在になるわよ?」

メフィー 「…No.13さんはレベルが違いすぎます…ディルフォルトとは思えません…だけど」

アレはまるで人間味を感じませんでした。
感情が存在しない、ロボットのように無機質な感覚でした。

シュン 「はぁ…どっちみち、今はそんな考察あまり意味を成さないね…まずはフレシア王国の制圧を最優先で考えるべきじゃない?」

レイクリッド 「…シュン君の言うとおりですね、我々は無事このカネイルド要塞を抑えました」
レイクリッド 「勝利はほぼ、確実と思えます」

フライ 「では、今後の軍の動きは?」

レイクリッド 「首都攻略戦ですね、首都を包囲しつつ、首都へと攻撃を仕掛け、陥落させます」



…………。



『その頃、アズナード王国』


シズク 「ふぅ…以前、正体不明ポケモンの被害増大…か」

デオキシスは私たちラスフォルトの出現と同時に、このティファ地方に被害をもたらしてきた。
なぜ、人々を襲うのかは分からない。
ただ、世界各地に出没し、被害を知らせてくれる。
そんな中そのデオキシスの被害を受けた二人の看護をしていた。
フレシア王国攻略戦が始まってすでに2週間、メフィーさんたちがどうなっているのか一切の情報が入ってこない。
辛うじて、最近ティファ地方で起きていることの情報は入ってくるものの、さすがにフレシアとの戦争の情報は入ってきませんね。
多分、無事とは思いますが…ね。

シズク 「はぁ…今日の晩御飯、どうしましょう…?」

私は今日の晩御飯の献立を考えていた。
大体、この世界の食材の特長はわかりました。
最初は似ているからと手を付けてみたら、えらく苦かったり甘かったりと大変だった。
しかし、2週間もずっと食事を作っていたらさすがに覚えました。
今日は焼き飯でも作ってみましょうか、後は錦糸卵風のスープも作って中華風に…。

シズク (ふぅ…家事を一人でやるのは大変ですね…まぁ、仕方ありませんが)

さぁ、まだ夕食には遅いので掃除を済ましてからにしましょう。



…………。



シュン 「フレシア王国を制圧したとしてその後はどうなるんだ…?」

ソウヤ 「どういう意味だよ?」

シュン 「フレシア王国領を制圧するとエリュクス帝国との接点ができるわけだろ?」
シュン 「今までは小国に包囲されつつも、大国との隣接点を持たなかったわけだ」
シュン 「それが、この戦に勝てばその大国と隣りあわせということになる」

フライ 「ある種、今までは小国との小競り合いをしながらも、接点を持たなかったわけね」
フライ 「陸地沿い面すれば、必ず何かアクションを起こしてくるはずね」
フライ 「ま、そこは国王閣下殿の力量の試されどころじゃないかしら?」

エリュクス帝国がどんな国家かわからない。
サージアス王国に私がいた頃は、エリュクス帝国はティファ地方への侵略すらも考えているとの噂もあった。
その真意は定かではないけれど、もし噂が本当ならばティファ地方にとって最大の脅威となるでしょうね。

フライ (もしサージアス王国に侵略の意思があるのならば、国力の差を一刻も早く埋める必要があるわけね…)

別にこのアズナード王国に義理があるわけじゃないけど、あんまりコロコロ立場を変えるのも問題よね。
それに…シズクちゃんの真意がまだ読めない…。
なぜ、シズクちゃんはアズナードの侵略に加担するのか?
少なくとも、悪意や興味本位で戦っている節はない、戦うことに充実感を得ているという感覚もないし…。
まぁ、あれが精神をコントロールして作っている虚空の偶像だったら別だけど…。
でも、その場合…この世界でもっとも恐ろしいのは…。

フライ (シズクちゃんということになるわね…)

シズクちゃんが巨悪の根源でないこと祈るしかないか…。

フライ (どっちにしろ、一度シズクちゃんには聞いておいた方がいいわね…)

ソウヤ 「さってと…所定位置についたぜ、隊長代理?」

フライ 「作戦開始が決定されれば、狼煙が立ち上がるはずよ」

アズナード王国対フレシア王国戦、ファイナルフェイズ。
首都を包囲し、一斉に攻め入り短時間で制圧。
カネイルド要塞攻略戦の時のように、ある程度首都を包囲し敵の出方も同時に見ているのだ。
ちなみに私たちラスフォルト部隊は対エリュクスを意識し、首都バルパスより南方5キロの地点で待機していた。

シュン 「あの山脈の向こう側にエリュクス帝国があるわけか」

シュン君は南方コード地方側の山脈を見る。
一面草原に覆われるフレシア王国、その国境はコード地方とティファ地方を隔てる山脈に阻まれる。
故にこの山脈があるおかげでティファ地方とコード地方はこれまで大きな争いになったことはないらしい。
だが、逆を言えば、この山脈のせいで、コード地方の現状はティファ地方には伝わりにくい。
エリュクス帝国にどれほどの力があるのか…コード地方にもラスフォルトはいるのだろうか。
すでにティファ地方に点在する小国の小競り合いの中ではアズナード王国は王手を打っている。
このフレシア王国を制圧すれば、事実上ティファ地方はアズナード王国が支配するようなものだろう。

メフィー 「あ…! 煙が上がってますぅ!」

フライ 「…作戦決行ね、行くわよ!」

シュン 「はい」

ソウヤ 「おうっ!」



…………。



『同日 同時刻 フレシア王国 首都バルパス』


フレシア王 「ええい! アズナード王国が来ただと!? 一体我が軍は何をしているんだ!?」

アルテミシア 「いよいよ、終わりですね…」

フレシア王 「アルテミシア殿!? どういうことですか! なぜ漆黒の闇はでません!?」

アルテミシア 「残念ながら、初実戦だったもので、それに現状ではやはりラスフォルトに対抗できるまで成長もしていません」
アルテミシア 「それに…これ以上フレシア王国に加担する必要もない」

フレシア王 「!? ど、どういうことですかアルテミシア殿!?」

アルテミシア 「フレシア王国、大変頼りになりましたよ…お陰で多くの『実験の成果』が得られた…」

フレシア王 「実験だと…!?」

アルテミシア 「ええ、ですがこれから『本国』にその成果を届けないといけません」

フレシア王 「まさか…裏切るのか!?」

アルテミシア 「裏切る…少し違いますね…」

フレシア王 「う…な…何をする気だ!? なにを…!?」

ドスッ!!

フレシア国王の腹部に白銀に輝く剣が腹部を貫き、背中を貫通していた。
その剣が抜かれた時、鮮血が飛び散り、地面を赤く染める。

アルテミシア 「…見限るのですよ、フレシア国王?」

フレシア王 「条約…違反だぞ…エリュ…クス…!」

アルテミシア 「ふ…我がエリュクス帝国とこんな偏狭の小国が対等な同盟が本当に結べるとでも?」
アルテミシア 「我々エリュクス帝国は初めから、ここを実験場に利用していただけだよ、お陰でいいデータが取れた…感謝しますよ…フレシア国王」

フレシア王 「う…ぐ…ぐ…」

アルテミシア 「あんまり喋らない方がいい、もしかしたら助かるかもしれない、もっとも我が帝国ならいざ知らずこの国にそれほどの医療技術があるかは知りませんが」



…………。



ワァァァァァァッ!!

フライ 「ウインディ、突っ切って!」

ウインディ 「ウィン!」

私は後ろにレイクリッド王子を乗せて、強行突破を仕掛けていた。
このままウインディに乗って王宮へと乗り込む。

レイクリッド 「気になりますね…」

フライ 「…何がです?」

レイクリッド 「抵抗が薄すぎる気がします…首都を守るには兵士の数も少なかった…」

フライ 「フレシア王国の国力ではないと?」

レイクリッド 「はい、具体的な数は分からないとはいえ、配備兵がやはり少ないかと…」

フライ 「…多いにせよ少ないにせよ、このまま王宮のバルコニーに行きますよ! しっかり掴まって!」

ウインディ 「ウォーンッ!」

ビュオンッ!!

ウインディは大きくジャンプして、一気に2階のテラスへと侵入した。

レイクリッド 「す…すごいですね…」

フライ 「一気に指揮系統を制圧しますよ!」

私たちはウインディから降りるとウインディをボールに戻し、国王を探す。
その際、気になったことは…。

フライ 「…王宮になぜ、守備兵がいないのかしら…?」

レイクリッド 「…明らかに異常です! まるで大半の兵士が首都を放棄したかのようではないですか!」

フライ 「まずはここ!」

ガタァン!!

私は2階のテラスから真っ直ぐ進んだ先にあった一番大きな扉を開ける。
警戒しながら中を覗くと、敵兵はいない。
その代わりに…。

レイクリッド 「!!? フ、フレシア国王!?」

フライ 「…すでに、死んでいる?」

私たちが入った先の部屋は地面を一面鮮血の赤で染め、中央に身分の高そうな服装の男性が横たわっていた。

レイクリッド 「フレシア国王! 大丈夫ですか! 国王!?」

フライ (…地面に飛び散った血が凝固している、死後それなりに時間が経っているわね…)

私は地面に飛び散った血を見た。
鑑識の人間じゃないんで詳しい死亡時刻の特定はできない。
ただ、分かることは死亡して時間が経っているということか。

フライ 「失礼…」

私は仏さまに手を合わせて拝み、容態を見てみた。
死因は…腹部の貫通かしら?
他に外傷は見当たらないわね。
皮膚にはチアノーゼ(酸素欠乏症)がおきている…出血多量でヘモグロビンが足りないのね。
自殺か他殺か…。

フライ 「フレシア国王とは面識はあったんですか? レイクリッド王子?」

レイクリッド 「…いえ、特には」

フライ (自殺か他殺かはわからないか…)

まぁ、凶器が見つからないところ自殺はなさそうだけど。
他殺に見せかけるため誰かが凶器を隠蔽したのなら別だけど。

フライ 「軍上層部はこれを見て、戦線を放棄したってわけね…」

レイクリッド 「ようやくわかりました…なぜ首都防衛戦にここまで、敵兵力が少ないのか…」
レイクリッド 「守備隊は、事情を知らない末端の兵士たちだけということ…ですか…」

フライ 「これ以上の戦闘行為は無意味ですね…投降勧告を行います」

レイクリッド 「…それは、私が行います」

レイクリッド王子は、着てみるや否や死んでいる王様に内心ショックを受けているようだった。
来てみるや否や死んでいるなんてねぇ…。

フライ (もし、エリュクス帝国と繋がりがあったとしたら、隠蔽工作ね…)

繋がりがなかったとしたら、どういうことかしらね?
小心者の国王の自殺?
それとも、暴君の暴走を兵士が止めた、その末路?
なんにせよ、証拠がない。

フライ (エリュクス帝国か…何もなければいいのだけど)



…………。



『一方その頃…ジナ地方、ミラルド王国』


リス 「…以上、ティファ地方の状況だ」

ケン 「アズナードっちゅう王国が三カ国統一かい」

キッヴァ 「力のある国家なのね…」

キキョウ 「あの国は多数ラスフォルトを有するからなぁ〜」

私たちラスフォルトは定期的に全員集合させられ、リスに世情を教えられていた。
今回の話は諜報部からの連絡で、アズナードがフレシア王国を征服し、国土を増やしたということだった。

リス 「そして、今回気になるのが漆黒の闇…」

キサラ 「純正ポケモントレーナーの部隊か…」

レン 「そんなに対したことないんだろ? 報告じゃさ」

リス 「ああ…どうやら今の時点ではな」

リン 「そんなの、こっちもどっこいどっこいでしょ?」

私はリスを見てそう言うと、リスは微笑を浮かべた。

リス 「…『出遅れた』が、我々にはノウハウがある…すぐにでも実戦に耐えうる『ディルフォルト』を輩出できるだろう」

リスは以前助けたミルフィちゃんから、一つの可能性を見出した。
ラスフォルトに頼らず、なおかつ一騎当千の戦力を誇る部隊、すなわち純正ポケモントレーナー部隊。
『ディルフォルト』と呼ばれる部隊だ。
すでに12名の『ディルフォルト』を私たちが面倒を見ている。

リン 「…それと、例の伝説のポケモンだけど、ありそうなのはヴァルガノ遺跡…かしらね?」

ディルフォルト部隊育成と平行して、行っていたのが伝説のポケモンの捜索。
だいぶ捜索も進み、可能性を含むと考えられたのはジナ地方北西部に位置するヴァルガノ火山の中腹部に存在する遺跡ね。
遠征部隊を結成したら行くつもりだった。

リン 「遠征メンバーは私、キサラさん、レン君、ケン君でいくつもりだけど、問題ない?」

リス 「…ふむ、特に問題はないと思うぞ」

レン 「ディルフォルト候補生の育成は居残りメンバーで?」

リン 「ええ、キッヴァちゃんと、キキョウさんに一任するわ」

キキョウ 「任されたまえ〜」

キッヴァ 「わかったわ…」

ミルフィ 「あの…私は?」

全く仕事のないミルフィちゃんが声を出す。
ミルフィちゃんは何か役に立ちたいのか、少し不満そうな顔をしていた。

リン 「…ミルフィちゃん、あなたは無理に何かする必要はないわ」

ミルフィ 「でも…」

レン 「ミル、僕たちは大丈夫だよ、心配しないで」

ミルフィ 「……」

ミルフィちゃんはうつむいてしまう。
このままヘソ曲げなきゃいいけど。



…………。



キサラ 「おう! お前ら、今日は俺が担当だ! 手加減しねぇぞ!」

候補生A 「イエッサー! 教官!」

レン 「えと…僕も一応、担当なんで…その、よろしく…」

候補生達 「サー! イェッサー!」

キサラ (なんで軍隊様式?)

レン (しかもマリーンズ?)



ミルフィ 「ふんだふ〜んだ、どうせ何も手伝えないよ〜…」

あたしは訓練場の片隅で候補生たちに指導を行うレン君たちを見ていた。
そりゃ、あたしは料理も出来ないし、バトルも中途半端だよ?
だけど、あたしだけのけ者なんてひどいよぉ〜。

ガバイト 「ガバ!」

サボネア 「サボーッ!」

キサラ 「いいか、お前ら! いつも言っているがパートナーであるポケモンはお前らの体の一部と思えよ!」
キサラ 「ポケモンを軽視するな! だが、舐められてもダメだ! ポケモンのことをよく理解しろ!」

候補生達 「イエッサー!!」

レン 「僕たちのように戦えるようになるには、バトルを多く経験し、そしてトレーナーとしての知識を覚えていく必要がある」
レン 「まずは実技です、各員模擬戦を始めて!」

ミルフィ (…そりゃただの中学生じゃポケモンについて教えられることは少ないけどさぁ…)

いまだに愚痴るあたし。
広い訓練場を利用して、各々が模擬戦を開始していた。
ここジナ地方はその大半を砂漠で占めるというだけあって、そっち系のポケモンが多い。
私と一緒についてきた、ガバイトちゃんたちもここで新たなトレーナーを見つけて頑張っていた。

候補生A 「大丈夫か、ヤミラミ!?」

ヤミラミ 「ヤ、ヤミヤミ!」

キサラ 「そうだ! ポケモンの状況は常に気を配れ、どうすれば上手く戦えるか常に考えろよ!?」

候補生B 「ガバイト、『りゅうのいかり』!」

ガバイト 「ガッバー!!」

マグマッグ 「マ…マグー!」

レン 「『りゅうのいかり』は固定ダメージの技だ、相手によっては有効だけどマグマッグの弱点を考えれば地面タイプの技で攻撃するのが適切だよ」
レン 「そうだな…そのガバイトは『あなをほる』が使えるはずだ、ちゃんとタイプ相性も考えた方がいい」

候補生B 「あ…は、はい!」

ミルフィ (…タイプ相性…私も考えてなかった…)

ていうか、17タイプも存在するのに覚える方が大変。
自分の技がどんな相手に効いて、どんな技に強いかとかは分かるけど…さすがに全部が全部は覚えきれない。
しかもこのタイプを理解するにはまず400種以上いるポケモンを全て把握する必要がある。
…もしかして、私ラスフォルトとして失格なのかなぁ〜…。
キキョウさんとか、アレで凄い知識豊富だし、ケンさんには一度コンテストの演技を見せてもらったけどすごかった。
リンさんはその道のトップクラスらしく、ケンさんとのコンテストバトルではケンさん惨敗…美しかったなぁ〜。
キサラさんは完璧、バトルのプロフェッショナル…ある意味すごい。
キッヴァさんもすごいポケモンいっぱいで強そうだったなぁ…レン君も知識すごいし…私って…なんにもできないのかなぁ?

キサラ 「ようし、そこまで! 10分休憩だ!」

候補生達 「イェッサー!」

レン 「ポケモンたちとのコミュニケーションは大事だよ? 信頼しあえるから強くなれるんだから」

候補生A 「ヤミラミ、これ食うか?」

そう言って候補生A君はヤミラミにビスケットを差し出す。
しかしヤミラミは首を横に振っている。
そして何を考えたのか適当に落ちている石ころを拾うと…食べちゃった。

ヤミラミ 「ヤミヤミ…ヤミ!」

候補生A 「お…お前、石なんか食うのか?」

キサラ 「ヤミラミは洞窟に住み、鉱石を食うポケモンだ、特に好物は宝石だな」
キサラ 「そのヤミラミの目は結晶化した宝石なんだぜ?」

候補生A 「変わったやつだなぁ…お前」

ヤミラミ 「シシシ!」

ヤミラミは笑っている、コミュニケーションはバッチリ取れているみたい。
この世界はポケモンとの接し方を知らない。
それゆえに、ポケモンとは対立していたみたいだけど、ちゃんと接すれば仲良くなれるんだね。

ガバイト 「ガバッ! ガバガバッ!」

候補生B 「ん? なんだ…お前のウロコ? 俺にくれるのか?」

ガバイト 「ガバッ♪」

レン 「ガバイトのウロコはあらゆる病を治す特効薬だそうだよ、良かったね友達の証だよ♪」

候補生B 「はは…ありがとなガバイト」

ガバイト 「ガバッ♪」

ミルフィ (レン君本当に詳しいなぁ〜…実はポケモンマニア?)

しかし、ガバイトのウロコにそんな効果がねぇ…ぜんぜん知らなかったなぁ。
まず、頑張って知識を得ることが私には大切なんじゃないかしら?

候補生C 「ん? サンド、それは?」

サンド 「サン〜…」

サンドは丸くなって、今度は転がり始める。
アレって…?

キサラ 「『まるくなる』と『ころがる』のコンボか」
キサラ 「『まるくなる』で防御を上げ、『ころがる』の初期威力を上げる効果がある、まぁ高レベルトレーナー同士のバトルでは有効とは言えんがな」

候補生C 「なるほど…」

キサラ 「レベル的にいえば、そのサンドはそろそろサンドパンに進化できるレベルだぞ」

ミルフィ (進化かぁ〜、見たことないんだよねぇ…いや、ゲームとかアニメでは見たことあるけど…)
ミルフィ (実際、どんな風に進化するのかなぁ?)

候補生D 「あの…どうやったらキサラ教官のようになれるんでしょうか…?」

キサラ 「あん? そうだな…俺たちの世界にはトレーナーとしてのそもそも下地、ノウハウがあった、この世界にはない」
キサラ 「俺はそんな、基礎レベルから違う世界でも、ある程度実力があるつもりだ、お前たちが追いつけないとはいえないが、普通なら10年はかかるだろうな…」
キサラ 「もちろん、普通のやり方じゃダメだ、レベルを上げるだけの状況も重要だな…」

候補生D 「はぁ…」

キサラ 「ま、ようするに努力しろってこった! まだポケモンと触れ合って半月しか経ってねぇお前が俺たちのように戦うのは不可能なんだよ!」

レン 「だけど、最低でもこの訓練場を卒業できるくらいまで成長してもらわないとね」

キサラ 「大将の判断次第だな…普通にやっていたら1ヶ月はかかるぜ…」

レン 「うん、オマケに僕たちは伝説のポケモンの捜索も平行して行っている…」
レン 「エリュクス帝国もなにかしら行動を起こしているはずだし、出来るだけ早くやりたいよね」

ミルフィ (あたしは無知すぎる…本当に必要にされるには私の努力が必要…か、よし!)

私はある決意をする。
絶対…絶対役に立ってみせるんだから!



第8話 完






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