UNIT
OPERATION 22 『想定外』
『9月某日 アメリカ ニューヨーク クレイドル邸』
リンリンリン! リンリンリン!
私は、旧世紀に開発された黒いダイヤル式の電話を使っている。
本当はアンティークを買うような気分で買っただけなのだが、今ではこれが正式な私の回線だ。
セシル 「こちらセシルだが?」
メシア 『セシル様、サナリィのグレッグ・フォスター様よりご連絡です』
セシル 「グレッグ君から?」
メシア 『回線をそちらにまわします』
ガチャ!
グレッグ 『失礼します! セシル・クレイドル様でございましょうか?』
電話の向こうから聞こえたのはたしかに、グレッグ君の声だった。
だけどおかしいな、今は中国の楊攻略を行っているはず、どうしてアメリカの私に?
セシル 「普通にしていていいよ、それよりどうしたんだい? こっち電話を掛けてくるなんて」
グレッグ 『は…、実は東アジア攻略戦に際しまして、エグザイルの使用していた旗艦が入手できたのですが、サブ動力炉がやられており、修復するだけのメカニックマンが不足しているのです!』
セシル 「…それで、サナリィの戦艦として早期運用するために、ウチの技術班の力が欲しいと?」
グレッグ 『恐れ多くながら…』
セシル 「ははは、いいよいいよ、で、戦艦の種類は?」
グレッグ 『JPA2166D-4K ダイナゴン級四番艦シーオンです』
セシル 「JPA…? 日本製? 珍しいね…」
グレッグ 『思ったより損傷が激しく、このまま運用するにはこれからの作戦に大きく影響しそうなのです』
セシル 「オーケー、必要な人員、それと補給物資も必要だな…届けよう」
セシル 「ああ…そうそう、ついでだけどね、サナリィの次期主力量産ユニットのトライアルだけどね、2機提出するよ」
グレッグ 『は? は…はぁ…』
セシル 「1機は君の部隊でも使用している『エアフォース』」
グレッグ 『!? シュウイチのあの機体ですか!? しかし量産型とするには、コスト面において難しいのでは…』
セシル 「可変機構と自慢の速度を落とさず、コスト面の低下…不可能ってわけじゃないよ…現に我々はやっている」
グレッグ 『は? やっているとは?』
セシル 「ははは、詳しいことはもう一度アメリカに来たときウチの工場覗いてみなよ!」
セシル 「それと、もう一機のトライアル機だけど、こいつもサナリィがすでに試作型を運用している」
セシル 「君たちが構想し、ウチが形作った、サナリィとクレイドルの合作、『9C2F』」
セシル 「とりあえず、今までは『機体運営』の上での試作機、今度は『量産型』としての試作機、両方とも3機ずつ、計6機一緒に送るよ!」
グレッグ 『6機も!? し、しかしすでにフリーダムの格納庫は一杯で!』
セシル 「シーオンを使えるようになれば解決だろ?」
セシル 「で、合流場所だが…ああ、朝鮮半島にハムフンってところにエグザイル基地があるな…ここを攻め落としといて、じゃ!」
グレッグ 『あ…ちょ!』
私は言うだけ言って強引に電話を切る。
サナリィにはもうちょっと急いでもらわないとねぇ…。
セシル (…じゃないと、私もそう長くないからね…)
私は再び電話を取り、メシアに電話を繋げる。
メシア 『どうしましたのでしょうか、セシル様?』
セシル 「今から言う、スタッフと機種、それに資材を輸送船に詰めといて、行き先は東アジア地区ハムフン、6時間以内に終えて出発するよう」
私はそう言ってサナリィに送るべき物を手早くメシアに伝える。
メシアはそれを聞いて、電話を切る。
後は放っておいても、やってくれるだろう。
セシル (ち…治そうと思えば治せるんだが…この仕事、休む時間もないよな…)
私はそう思うと、溜まっていた書類の始末にかかる。
私は16の時、クレイドル社をニューヨークの小さな街角で立ち上げた。
当初は社なんていう立派なものじゃなかった。
だが、私は0からスタートし、今日では世界一の軍需産業社、ひいては私は22歳ですでに世界一の富豪と言われるまでになった。
だが、この若さでそれだけの事を成すには…ちっと苦行が多かったかな…。
お陰で、現代医学なら治すことも可能な疾患を…未だ治せずにいる。
治さなきゃいけないのはわかっているんだけどなぁ…社長が休みとるのは…意外と難しいんだよな…。
…………。
クレス 「セシルの所から、技術スタッフが?」
グレッグ 「ああ…強引に合流場所がハムフンエグザイル基地に決められてしまった…」
マリア 「て…まだ、攻略前じゃないのさ!?」
グレッグ 「すまん、お前ら! 急行して落としてくれないか!?」
クレス 「…保存状況は保障できんぞ?」
マリア 「同じくできませ〜ん!」
俺たちは、クレイドル社に電話を行った、グレッグからなんとも無理難題みたいなものを突きつけられた。
アメリカからクレイドル社の技術スタッフが来るから、ハムフンを落とせ…と来たのだ。
落とす作戦はあったが、早すぎる…。
正直、どれくらい時間がかかるかもわからないのに。
クレス 「シーオンはどうする? 一応護衛もいるんじゃないのか?」
グレッグ 「どうするべきだと思う?」
聞いているのはこっちなのだがな…逆に聞き返されるか。
クレス 「…第2部隊だけでハムフンを落とす」
マリア 「ちょっと〜、それじゃあ第1部隊は居残りじゃない」
クレス 「だったら、交代するか?」
マリア 「え、う〜ん…?」
マリアはそれを聞くと首をかしげて、なにやら勘定を始めたようだ。
マリア 「やっぱ、クレスに任せるわ! 第2部隊お願い!」
クレス 「そういうことだ…グレッグ、熱核ロケットブースターの用意を…」
グレッグ 「その件だが、シーオンの中に輸送機が詰まれていた」
グレッグ 「1部隊分なら入れる、それを使ってくれないか?」
マリア 「まぁ、熱核ギガブースターは数に限りがあるからねぇ」
クレス 「…悠長なことを…了解した!」
マリア (第1部隊は、第2部隊と違って制圧戦とか、基地の攻略とかは苦手なのよねぇ)
クレス 「急がないといけないんだろ? すぐに事を始める!」
俺はそう言って急いで事を開始するのだった。
マリア 「あ〜あ、全くセシル様も無理難題仰るわねぇ〜…」
ビー! ビー!
マリア 「て…はいぃ!? 警報!?」
私はフリーダムの3階から待機中の外を眺めていると、いきなり警報が鳴る。
ちょ…いきなり侵入者!?
マリア 「一体、何者よぉ〜!?」
…………。
侵入者の居る場所は私のいた場所からそんなに遠くなかったようだった。
3階のフリーダム後部、そこに人だかりが出来ていた。
マリア 「ちょっと、一体何事〜!?」
リョウ 「あ…アンタ! 日本で会うた!?」
マリア 「ん〜? ああーっ!?」
私は人だかりを押しのけ、侵入者の顔を拝もうとしたら…それは知っている顔だった。
…さて、事は少し戻るのだが…。
リョウ (もうユーラシア入ったんよな? せやけどどこや?)
ワイはとある目的のため、フリーダムに潜入したわけやけど、現在地がわからん。
とりあえずユーラシア大陸へ入ったみたいやったし、ここらで降ろさせてもらおうかと思って、ダンボール作戦に出た。
ちなみにダンボール作戦とはダンボールに身を隠し、進む作戦のこと。
レオナ 「……?」
カツン…カツン…カツン…。
リョウ (? なんや、足が近づいてくるで? 女か…?)
ガバッ!
足はワイの目の前で止まると、ガバッとダンボールを剥がされる。
リョウ 「あ…ども…」
ワイの正体を見破ったんは、メイド服に身を包んだ女性やった。
なんでメイドが軍艦におんねん、てぇ…突っ込みをする間はなく…。
レオナ 「……」
ピ、ピピ、ピ!
なにやら、黒いリモコンのようなもんを取り出すと、ピピと電子音が鳴っとりますが?
リョウ 「アンタ…一体…ん?」
ワイはこのメイドの女性の目を見て違和感を感じる。
こいつ…人間やないぞ…まさか!?
リョウ 「まさか…! アンタ、ワイとおなじ…!」
ビー! ビー! ビー!
リョウ 「…て、警報!? どないゆうこっちゃ!?」
いきなり、警報が鳴り出すとドカドカとワイの周りには銃を構えた兵士さん方が取り囲んでいた。
リョウ 「ちょ…堪忍なぁ〜…ワイ、なんもせぇへんて、だから銃降ろしてぇなぁ〜」
ワイは素直に両手を後ろ頭で組み、なるべく愛想を振るう。
マリア 「ちょっと、一体何事〜!?」
リョウ 「あ…アンタ! 日本で会うた!?」
マリア 「ん〜? ああーっ!?」
突然、人ごみを掻き分けて入ってきたんは、日本のゲーセンで会うた、サナリィの軍人さんやった。
…………。
マリア 「あんた…えーと、リョウ君だったわよね?」
リョウ 「そういうアンタはたしかマリアはん!」
レオナ 「知り合いですか?」
マリア 「そうそう、彼は民間人よ、もういいいわ、撤収して撤収!」
私はそう言って、彼を取り囲んでいたサナリィの警備兵を持ち場に帰らせる。
マリア 「レオナ、調理室でみんなのためのご飯でも作ってくれない?」
レオナ 「了解しました」
私はレオナに指示を出すと、素直にそれに従い1階にある調理室へと向かった。
マリア 「おひさ〜♪ けど、どうしてアナタがココにいるのかな〜?」
リョウ 「ん〜、言わなアカン?」
マリア 「ダ〜メ♪」
私は極めて笑顔で務める。
彼はごまかしたいようだけど、そうは如何咲。
マリア 「単なる密航者ってぇなら、もっと乗り込む船考えそうなものだけど?」
リョウ 「アカン、民間の船には中国便はあらへん」
リョウ 「中国へ行くには、このフリーダムに乗り込むしかあらへんのや」
マリア 「中国行ってどうするの?」
リョウ 「会いたい奴がおるんや、そいつの指定した場所が台湾」
マリア 「台湾って…フリーダムが通るかも分からない場所じゃない」
リョウ 「日本からやと、向かえへん! 民間船もない! 手はコレだけなんや!」
マリア 「……う〜ん、にわかには信じがたいけど、アンタが工作員や諜報員の類なんてとても思えないしねぇ」
まぁ、仮に信じるとしてもちょっと無茶がありすぎる。
普通軍艦に密航する馬鹿はいないわよ?
見つかったら銃殺刑もありえるのに…。
マリア 「会いたい人と会ってどうするの? 会って終わりってわけじゃないでしょ?」
リョウ 「…仲間、探しとるんや」
マリア 「は? 仲間って…もしかして何かの特殊部隊に…?」
私はリョウの真剣なまなざしから、思わずいらない妄想を立ててしまうが、リョウは辺りをキョロキョロと眺め始めると。
マリア 「? どうしたのよ?」
リョウ 「…誰も居らへんな…マリアはん、これから見せるんは他言無用やで?」
マリア 「え…? あ…うん…て…」
私は戸惑いながらうなづくと、なんといきなりリョウは右腕を取り外した。
マリア 「て……ええええええええっ!?」
リョウ 「こ…声が大きいっちゅうねん!」
マリア 「ご…ごめん…で、でも! アンタその腕…」
リョウはすでに何事も無かったかのように腕を取り付けたが、あの断面…まるでロボット…。
リョウ 「ワイはマリアはんを信頼して、自分の正体見せました、ワイはマリアはんの想像の内にあると思うロボットや」
マリア 「ロ…ロボットって…新西暦元年当たりに全部ノウハウ棄てられて、もう造れないんじゃなかったの!?」
リョウ 「今の技術ではそうやと思う…せやけど昔は違う…」
リョウ 「ワイの誕生は新世暦15年、旧西暦2025年…」
マリア 「!? ま…まさか三世紀前…?」
リョウ 「…その通りや、ワイは今より技術水準のレベルの高いその時代に造られたロボットなんや」
リョウ 「なんやったら、製造ロット見せたろか? この後ろ首にあるんやけどな…」
マリア 「い…いいわよいいわよ! …ていうか、よく300年間も無事だったわねぇ…」
リョウ 「メンテの要らん永久機関やからな!」
リョウ 「と…いらん話はコレくらいで…まぁ、とにかくそういった諸事情でここにおるわけや」
マリア 「…う〜ん、まぁ大体わかったけど、でも密航者を許すわけにもいかないしねぇ…」
リョウ 「ああ、ワイはここでもええで、気合いで台湾まで行くわ!」
マリア 「ロボットが気合いなんて言ってどうするのよ…そうね…こっちと取り引きしない?」
リョウ 「はぁ? 取り引きっていきなりなんやねん…?」
私はリョウを見捨てるのも難だと思い、ある取り引きをもちかけることにする。
マリア 「アンタ、輸送機扱える?」
リョウ 「輸送機どころか、軍艦や戦車だって扱えるで〜、で、それが?」
マリア 「あそ、じゃ、着いてきなさい」
リョウ 「え…あ…ちょ! どこ行くねん!」
私はリョウを連れて、第2部隊の元へと向かった。
…………。
マリア 「――つーわけで、この子よろしく」
クレス 「言いたいことはわかった…がだな」
俺はいきなり一人の男を連れたマリアに押しかけられる。
こっちはハムフン基地攻略戦に、全員がピリピリしている時にだ。
マリアはやってくるなり、いきなり訳の分からん男に輸送機の運転をさせると言い出したのだ。
クレス 「所属は?」
リョウ 「あらへん」
クレス 「出身は?」
リョウ 「日本」
クレス 「年齢は?」
リョウ 「18歳(嘘)」
クレス 「…オイ、マリア…民間人を使えというのか?」
マリア 「そんなこといったら、正規の軍人上がりの人間の方がサナリィは少ないんだけど〜?」
…そういえばそうだったな…。
軍職からサナリィに転向してきた人間なんてマリアやガルムさんくらいか…。
リョウ 「松屋・良介(マツヤ・リョウスケ)でーす! 以後よろしゅう!」
マリア 「無事、任務を終えたら輸送機アンタにあげるわ、頑張るのよ?」
リョウ 「アイアイサー!」
ガルム 「いいのですか…サナリィには輸送機も貴重かと思うのですが…」
マリア 「人間の方が貴重ですよ、大丈夫大丈夫! シーオンが運用出来るようになったら問題解決!」
クレス 「たく…! 俺は第2部隊の隊長を務める、クレス中尉だ」
リョウ 「? 下は?」
クレス 「無い」
というより、今の俺に下の名前は必要ない。
しかしそれを聞いてリョウとかいいう奴は頭を傾げていた。
マリア 「じゃ…任務がんばってねぇ〜♪」
リョウ 「ああっと、マリアはん!」
マリア 「? どったのリョウ?」
マリアはリョウをこっちに引き渡して、去ろうとするとリョウに捕まえられた。
リョウ 「(マリアはん…あの、レオナっちゅうメイドのことやけど…)」
マリア 「(? レオナがどうしたの?)」
なにやら、リョウがマリアに顔を近づけて、ヒソヒソ話を始めた。
一体何を話しているのか…まぁ興味はないが。
リョウ 「(あの娘…何者なんや? ワイと同じ匂いがしたんやが…)」
マリア 「(レオナから…? それってまさか…?)」
リョウ 「(推測に過ぎんのやが…あの娘、ロボットなんちゃうか?)」
ナルミ 「そろそろ、出発時刻よ、隊長どうするの?」
クレス 「そうか…リョウ! ほどほどにしておけ!」
リョウ 「あ、ほーい!」
リョウ 「マリアはん、ほなら〜!」
俺は時間が来たので、全員を輸送機に乗り込ませて、ハムフン基地へと向かう。
…………。
『同日 某時刻 ハムフン基地』
サエ 「どういうことだ? ユニットが見当たらんが?」
フェイク 「ああ、何分こっちには持ってきていないのですよ」
私はフェイクに連れられて、ハムフン基地へと避難していた。
しかし、ハムフン基地に着いたとき、驚いたのは今時珍しくユニットの配備されていない基地だった。
サエ 「戦闘機や、戦車ばかり…変わった基地だな…」
フェイク 「間借りしている基地なものでね」
サエ 「間借り…」
フェイク 「さて、サエさん、あなたとは少し話したいと思っていました」
サエ 「私も少し、君とは話がしたい」
私は私の娘、『睦月』と同じ顔をする少女のことが気になった。
睦月の体は、今私が使っている…だったら…この目の前のは…?
フェイク 「まず先にあなたの疑問をひとつ解消しましょう、私は睦月という少女とはなんら関係はありません」
サエ 「! そうか…」
フェイク 「そして、あなた方とは私は関係ございません」
サエ (単なる偶然…か?)
フェイクは単なる偶然とする、だがさすがにここまで似られるとそうすぐに納得することは難しかった。
フェイク 「……ふふ、よほど睦月さんと会いたい…そんな顔ですね」
サエ 「!」
フェイクはうすら笑ってそう言う。
睦月に会いたい…私が?
たしかに、そう思う気持ちがあるのは確かだろう…私は生きたくて睦月のこの体で蘇生したわけではない。
望まずして、私は生かされたのだ…ただ能力を惜しまれて。
その性で私は、人から忌み嫌われた。
何処の世に、娘の死を以て、生を望む親がいようか。
フェイク 「ふふ…あなたの欲望は強く…そして純粋…」
サエ 「何が言いたい…?」
私はこれでも知将で知られる、エグザイルの将の一人だ。
フェイクの笑みは確実に意味を持つ、それは確信もって言えた。
フェイク 「エグザイルの中でも、特に私は…あなたの願いを叶えられる…」
サエ 「!? どういう意味だ…?」
フェイク 「ふふふ…サエ・ユメサキ中将、私はあなたの能力を買う」
フェイク 「私と共に南極へと行きませんか…? 真実を知りに…」
サエ 「南極へ…?」
フェイク 「私はフェイク…南極方面軍司令にして、エグザイル統治者の一人、フェイク…」
サエ 「……」
統治者…噂程度では聞いたことがある。
嘘か真か、我がエグザイルに存在するという10人の統治者。
エグザイルの王へと会う、扉を開く鍵を持つとされ、地球を10の地区に分け、密かに支配しているという存在だ。
ただの、眉唾の噂に過ぎんかと思っていたが本当にいたのか…。
フェイク 「どうします? 来ますか?」
サエ 「……」
…………。
リョウ 『ほ〜い! もうそろそろ目的地やで〜! 出撃準備よろしゅう〜!』
輸送機内で、ユニットの中で待機する第2部隊。
俺は輸送機を操縦するリョウの報告を聞き、最後のミーティングを始める。
クレス 「各員、これよりハムフン基地攻略戦を開始する」
クレス 「本基地を押さえれば、ユーラシア大陸においての拠点を得ることが可能となる」
クレス 「敵基地の戦力の詳細は不明、危険を感じた場合速やかに退避すること」
デルタ 『了解』
マリーナ 『了解ですわ』
ガルム 『了解だ』
ナルミ 『了解』
全員の声が、通信機越しから伝わってくる。
全員落ち着いているな…さすがだ、伊達に修羅場は越えていないか。
リョウ 『目標地点、降下準備よろしゅう! じゃ…カウント始めるでー!』
クレス 「ハッチも解放しろよ!?」
リョウ 『わぁってまんがな! 10…9…8…7…!』
リョウのカウントが始まる。
降下のタイミングを間違えれば途方も無い場所に降下することになる。
クレス 「トップは俺が務める!」
リョウ 『2…1…降下開始や!』
ハッチが開くのと同時に、俺は降下を開始する。
クレス 「クレス中尉、ナイトメア降下する!」
デルタ 『デルタ・メラス少尉、ホワイトウインド出撃する!』
ガルム 『ガルム・グレイド中佐、ハードクラッシュ、降下開始!』
マリーナ 『マリーナ・V・トリフ少尉、サクリファイス行きますよ』
ナルミ 『ナルミ・サクラ少尉、カラーマスター出る!』
第2小隊の面々は続々と降下を開始する。
目標基地との距離10km。
そこから空中を滑空しながら基地を目指す。
クレス 「ナイトメアより各機へ! 敵基地の戦力は不明、基地の制圧は早急に行わなければならない」
クレス 「障害となるものは速やかに排除せよ!」
ナルミ 『こちらカラーマスター! 突撃し、敵を撹乱する!』
サクラの乗るカラーマスターは光学迷彩とECSジャマーを搭載しており、肉眼モニター問わず、その姿を確認するのは難しい。
ただし、味方のレーダーやモニターからも消えるんで、何処へ行ったか完全にわからなくなるのが難点か…。
マリーナ 『クレスさん、妙です…』
クレス 「? 妙って何がだ?」
サクラがステルスを使用後、突撃した後、マリーナが妙だと言う。
突然のことに、何がだと聞き返したが、マリーナの口から出てきたのは本当に妙な話だった。
マリーナ 『あの基地…人の気配が無いのですが…?』
クレス 「! 無人?」
マリーナ 『距離があるので確証はありませんが…まるで人の思念が感じられません…』
現在基地との距離4km、たしかにマリーナの感知も出来るのか出来ないのか曖昧な距離だ。
人がいない…か。
マリーナのESPは本物だ、あてずっぽうに言ったわけではあるまい。
だが、珍しくマリーナが自分の言動に疑問を抱いている。
クレス (注意せねばなるまいな…)
やがて、距離は残り2キロとなる。
しかし、不思議なことに本来なら5キロ地点くらいからでも十分迫撃砲が飛んできそうな物だが、ついに今まで飛んでこなかった。
もちろんサクラが基地内部に潜入し、撹乱しているのも要因だろう。
デルタ 『大佐! ハムフン基地…妙です! ユニットが…見当たりません!』
クレス 「…こっちでも確認している! どういうことだ!?」
ナイトメアのモニターの向こうに見えたハムフン基地は、まるで時代錯誤したかのような基地だった。
旧式の戦車に、旧世紀の戦闘機……。
ただ、マリーナの言うとおり、たしかに人の気配が無かった。
クレス 「……当初の予定通り、攻撃を開始する!」
俺は起動する、兵器郡を狙い、攻撃を開始した。
ハムフン基地の防衛はあまりにあっけなく、そして拍子抜けなのだ…。
…………。
クレス 「…こちら、第2部隊、ハムフン基地の制圧は完了した」
グレッグ 『そうか! こちらもこれからそっちに行く、用心は怠るなよ!?』
クレス 「…わかっている」
ハムフン基地はものの30分程度で、完全に沈黙していた。
逃げ出したのか、それとも初めから無人だったのか、人の気配はまったくせず、あまりに不気味な基地であった。
リョウ 「おーい、クレスはん。 これから基地内部の捜索に移るでー?」
クレス 「……リョウ、なぜお前が?」
リョウ 「まぁ、ついでやついで! 輸送機貰えるっちゅう話やしそのくらいしたるわ!」
クレス 「…防衛システムにやられんようにな」
リョウ 「はっはっは! 大丈夫や大丈夫!」
ハムフン基地外部にあれだけ戦力が薄く、内部に溜まっているとは思えないが、何があるかはわからん。
これから基地内部の捜索に移るわけだ、リョウもついでと言って手伝うと言ったのだ。
人手が足りないのはたしかだ、俺はナイトメア内部で外部から来るであろう者に対処する。
報告は無線機でくるはずだ。
…………。
リョウ 「エライこじんまりした基地やなぁ〜」
ワイは独自で基地の内部を調べとった。
思ったより小さい基地みたいで、外も内もまるで人がおらんのぅ…。
一体、どうなっとるんや?
?「……」
リョウ 「!? ちょ…誰やっ!?」
一瞬、通路の先に誰かがいたような気がした。
一瞬の内に通路の角を曲がって消えよったが…。
リョウ (女か…? 髪が靡いとったが)
アジア系の女やったように思えた。
黒い髪の毛が腰まで伸びていたし多分女やろ。
リョウ 「追う……て、その前に…」
ワイは急いで追おうとしたけど、一応無線機でクレスはんに報告する。
クレス 『今、そっちにメンバー全員が向かっている、危ないと感じたらすぐ逃げろよ?』
リョウ 「わぁってますって! ほな、切ります!」
どうやら、デルタはんたち、こっちに来ているらしいな。
何者かわからんけど、突き詰めたらぁ!
『同日 某時刻 ハムフン基地 東棟3F』
リョウ 「多分消えたんは…こっちのはず」
ワイは渡り廊下を抜け、消えた女の後取りを追った。
渡り廊下抜けると広いフロアに出た。
? 「ふふ…ようこそ」
リョウ 「! お前は…!」
フロアのど真ん中、最初見たときはおらんかったのに、気がついたらど真ん中に一人の女がおった。
150センチ弱の身長、アジア特有の肌、黒い髪が腰まで伸び、エグザイルの制服を着ておった。
年齢15〜16ってところか?
? 「私はフェイク、ようこそハムフン基地へ」
リョウ 「アンタが、ここの責任者か?」
ワイはまさかとは思いながらもそう聞いてみた。
不思議なことにこの目の前の少女からは何も感じられへん。
ひどく無機質…まるで生気が感じられへん。
リョウ (こいつ…何者や…? まるで死人か、ロボットやないか…)
フェイク 「そう、私はこの基地の管理者だった者さ…もっとも今はここにはいないがね」
リョウ 「今は?」
フェイク 「君、名前は?」
リョウ 「リョウ…リョウスケ・マツヤ」
フェイク 「リョウ君か…ふふ、覚えておくよ」
ブゥゥゥン…。
突然、フェイクの体がぶれる。
何が起こったか…そう思った瞬間には、フェイクに感じてた違和感にもようやく納得がいっていた。
リョウ 「ホログラフィかい…そりゃ殺気も気配もあらへんわ」
フェイクの立っていた位置には、キューブ状のホログラフィ発生装置があった。
チャチィ仕掛けやけど、見事に引っかかったなぁ…。
リョウ (フェイクか…あいつ、一体何者なんや?)
だけど、ホログラフィを含めなくても、なにかフェイクには違和感を感じていた。
…NEXT OPERATION A GO
Strategy of the following!
ハムフン基地を押さえ、ついにサナリィは中国へと足を踏み入れることとなる。
しかし、南極方面軍所属のはずのフェイク、そして東アジア地区の統治者楊。
二人の統治者がサナリィの前をちらつき、進攻を遅める。
次回 UNIT
OPERATION 23 『見えない軍』
クレス 「なぜフェイクが…?」